医療安全よもやま話
2022-12-01
1999年という国際的にも我が国においても医療安全の重大な転換期に医師となり、目の前の課題に必死に対応し続けていたら、気が付けば「おじさん」になっていました。
毎年、18歳の大学生に講義をしているのですが、1999年に起きた著名な事故の話をしても、今の学生にとっては「生まれる前の話」になってしまいました。
若い学生たちとディスカッションをしていて痛感するのが世代間ギャップです。医療界(特に医師)は世代の幅が広く、職人の世界であるため、世代ごとの「ふつう」の相違による衝突が顕在化しやすいように思われます。私が子供の頃には、テレビ番組で親や教師が子供を怒鳴り散らし、殴りつける映像が当たり前のように流れていました。そして、実際の学校でも、病院でもそういった指導が当たり前に行われており、それが「愛のある教育・指導」であるとされてきました。
しかし、皆さんご存じの通り、今の若い世代の感覚では、そのような教育・指導は、信じられない野蛮な行為であり、許されないこととなりました。
ところが、医療界は年功序列の縦社会が未だ強く残っており、その結果、令和2年度厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」では、職種別で、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「建設業」に次いで「医療、福祉」(35.5%)は3番目にパワハラが多い職種とされています。
Googleで「医学部 パワハラ」で検索してみてください。残念ながらいまだに、毎年、多くの記事が発見できるのが現状です(具体例を書こうかと思ったのですが様々な配慮からやめておきます)。
これを医療安全の言葉でいうと、心理的安全性であろうと思います。患者取り違え事件も病棟看護師と手術室看護師の上下関係により、過ちを指摘できなかった結果、患者の入れ替わりが生じました。かつて個人の注意力≒気合と根性の問題とされていたものが、実は心理的安全性の問題であることが次々と明らかになってきています。
心理的安全性を高め、医療を安全にする一つの方策として世代交代は重要であり、さりとて知識、技術の連続性を絶やさぬよう、円滑な世代交代がはかれる組織づくりが求められているともはやどっぷりと「おじさん」となった私は感じている次第です。