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第12回:『改善策の❝常連さん❞に思うこと』 ー渡邉 幸子ー

『改善策の❝常連さん❞に思うこと ~「6Rの徹底」「ダブルチェックの徹底」「フルネームを名乗ってもらう」は、本当にそれでいいの?~』
 
 
2021年度の医療の質・安全学会学術集会のプログラム委員会企画において、私は「フルネームを名乗ってもらうルールなんていらない」というアンチテーゼなテーマで発表しました。
もちろんそれは逆説的な意味で、「フルネームを名乗ってもらっても同姓同名の患者さんを識別することはできない。
それだけでは不十分だしルールの本質はそこではないですよ」ということであり、改善策やルールが一人歩きするのを避けたいという思いがありました。
専従の医療安全管理者になって今年で18年目を迎えますが、これまでにどれほどの数のインシデントレポートを読んだのか、ざっと数値化してみたところ約8万件のレポートに触れてきた計算になります。
もちろん軽微なインシデントから重大なアクシデントまで様々ですが、改善策の欄には、まさに❝常連さん❞とも呼ぶべき使用頻度の高い対策として、「6Rの徹底」「ダブルチェックの徹底」「フルネームを名乗ってもらう」があります。
ちょっと嫌ないい方をすれば、これを書いておけばなんとかなる便利な改善策とも言えるのです。
 
 
これらに共通するのは表現が曖昧で具体性に欠けること、精神論・根性論の対策に過ぎないことです。
与薬時の患者間違いのインシデントの対策として「6Rの徹底」、「ダブルチェックの徹底」、「フルネームを名乗ってもらう」といった❝常連さん❞の重ね使いも少なくありません。
「6Rの徹底」を例にとると、患者を間違えた場合も、与薬時間を間違えた場合も、用法を間違えた場合も、回数を間違えた場合も、区別なく改善策に「6Rの徹底」と書かれていることがあります。
6Rとは6つのRight(正しい)、Right patient(正しい患者)、Right drug(正しい薬物)、Right purpose(正しい目的)、Right dose(正しい用量 )、Right route(正しい方法)、 Right time(正しい時間)の確認が必要であることを示しています。
これら6Rは一度に実施することではなく、指示受けの段階、与薬前の指示確認の段階、カートへのセット段階、与薬準備段階、与薬実施の段階など、場面によって確認する項目は異なり、さらにそれぞれの段階で正しい情報と『照合』しなければ意味がありません。
患者を間違えて与薬したのであればその対策としては、「6Rの徹底」というよりも「患者のリストバンドの氏名と分包紙(ラベル)に記載された患者氏名を照合し、一致していることを確認してから与薬する」のほうがずっと具体的で本質に基づいた改善策になるでしょう。
一見便利な表現の改善策を乱用するのではなく、適切な要因分析により具体的で実効性のある対策を考えるようにしませんか。
 
 
白岡中央総合病院 医療安全管理課課長(専従医療安全管理者/薬剤師) 
渡邉 幸子