医療安全よもやま話

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第14回:始まりは、定食屋のおかみさん  ー甲斐 由紀子ー

運動下手の私は、職場のイベントは炊き出し担当でした。
楽しそうに食べるみんなの笑顔に気をよくして、密かに職員向けの定食屋のおかみさんになろうと目論んでいました。
しかし、ターミナルケアや研究を進めていくうち、心のケアに興味を持ち臨床心理士を目指して大学院に入りました。
その後、兼任GRMとして医療安全管理部の創設に関わり、2002年に初代専従GRMに着任し、約10年間(ワンオペ時代)は、他大学の先輩GRMらに支えられ組識づくりに奔走しました。
教員を経て2022年より再び医療安全管理に携わっています。

医療安全管理に関わって23年、改めて医療者一人ひとりが医療安全マインドを育んでいるか、安全を最優先できているか、より安全な組織になったかと考えてみました。
現場では、医療者の様々な努力も空しく同じようなインシデントが繰り返され、次々と新たな危機も現れています。
また、価値観の多様化が進み、療養環境も医療者の職場環境も一層リスキーになっています。
このような前例のない深化の時代では、格段に安全管理の難易度が上がり、これまで以上に医療安全管理部門の力量が問われていると感じます。

医療は不条理で不確実であるにも関わらず、医療者には常に最善の医療が要求されます。
最前線では、医療者が日々研鑽に励み横の連携を図っているものの、部署・部門・職種のリスク感性には温度差があり、縦の連携が弱いと感じます。
一方、医療安全管理部門は、制度整備され人員も増えて多職種構成に移行している反面、業務量が拡大し仕事をすればするほど仕事が舞い込み責任も伴うことから毎日が時間との戦いです。
今こそ、医療者どうし、患者と医療者どうしの結びつき、つまり、「人づくり」が重要だと感じます。

来し方を振り返ると、たくさんの方々へ礼を欠き、気づかず恥をかいた日々でした。
改めてお世話になった方々に対して、役に立てることはないかと考えました。
医療者が医療者役割を果たせるように医療者どうしを繋ぎ、患者が病を自分事として捉え患者力を培って患者役割を果たせるように医療者との「橋渡し」をする医療安全の原点を支援すること(医療安全管理部のおかみさん?)が、その答えではないかと考えます。 
スティーブ・ジョブズはスタンフォード大学の卒業式辞で「STAY HUNGRY STAY FOOLISH」と述べています。
これからも私は何者で何ができるのかと模索しながら歩みたいと思います。

 

宮崎大学医学部附属病院参与 宮崎大学名誉教授
医療安全管理部専従医療安全管理者/看護師    
甲斐由紀子