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第9回:経営システム工学科の教員として思うこと。 ー小松原明哲ー

私は工学部の教員です。所属は経営システム工学科。マネジメントシステムの企画、開発、運用、維持に関わることを扱っている学科です。例えば、宅配便。今日出して、明日、間違いなく相手先に届くということは、素晴らしいことだと思われないでしょうか? 日本全国で、いったい一日あたり、何個の荷物が行き来しているのか分かりませんが、その中で確実、迅速に届くのです。こうしたことが可能なのは、優れたマネジメントシステムがあるから。そういったことを考えている学科です。
こうしたマネジメントシステムは、大きく4つの要素から具現化されています。働く“ひと”、設備機器などの“もの”、“情報”、そして“お金”です。これら性質が異なる4つの要素を的確に組み合わせることで、マネジメントシステムは安定的に機能する、つまり宅配便であれば間違いなく相手先に届くのです。しかし、これらの要素の組み合わせがまずかったり、どこかに不具合があると、そうはいかなくなります。ひとが間違いをしてしまったり、良かれと思ってやったことが裏目に出たり。設備機械や、荷物を個別管理している情報システムに不具合が起きても大混乱です。お金は即、安定機能を阻害するものではありませんが、しかし赤字が続けばスタッフに給料は支払えず、設備機器の更新もできません。挙句は倒産の憂き目にあってしまいます。
私は、これら4つの要素のうち、「ひと」について取り組んでいます。ミスをしない、失敗しないためにはどうするか、ということはもとより、いかに意欲を持ってもらうか、創造的なことを考え能動的、柔軟に行動してもらうにはどうすればよいか、などが課題です。そしてそれは、ひとの生物学的、心理学的、社会学的な諸側面から考える必要があります。疲労、判断力や、やる気、また組織における役割など、ひとは様々な側面をもち、それらは相互に関係性を持っていると感じます。加えて複雑化する社会、急速な技術進歩など、ひとを取り巻く状態はダイナミックに変化し、ひとの行動に影響を及ぼしています。私はそうした関係性を「人間生活工学」と言う言葉のもとに考えておりますが、「ひと」の本質それ自体は、時代が変われど場所が変われど、同じようなものなのではないかとも感じます。
医療機関でも、傷病を抱える患者さんが回復して退院されるためには、医療スタッフ、医療資機材、医療情報、そして病院収支を整合させる適切なマネジメントがなされる必要があるものと思います。そして「ひと」についてみれば、「人がいればエラーあり」ですし、一方で「人のレジリエントな行動で救われる命あり」でもあると思います。人間生活工学の立場から、医療の質や安全にお手伝いできることがあれば有難いと考えているところです。
 
小松原明哲: 早稲田大学理工学術院 創造理工学部 経営システム工学科 教授