医療安全よもやま話
第16回:シミュレーショントレーニングについて ー水本 一弘ー
2023-09-25
私は、元々麻酔科医で、救命救急センター勤務歴もあり、気道管理、中心静脈穿刺や心肺蘇生を日常業務としてきました。
その延長線上で、気道管理、中心静脈穿刺や心肺蘇生に関するインストラクター資格を取得し、週末を中心に、和歌山県内外でセミナーや講習会に参加してきました。
気がつくと、そのような活動を20年以上続けております。
麻酔科は、朝は早く夜は遅いのが当たり前で、当直では時間外の救急手術に対応して、慢性的な睡眠不足状態に陥っているにも関わらず、週末が近づくと、深夜まで配布資料を準備して、土曜日は早朝から出かけるという、家庭を顧みない遊び人のような生活を送ってきました。
土曜日の夜には、意見交換会という名目の飲み会があり、それは確かにインセンティブでしたが、それ以上に、受講生からの「受講して良かった。明日からの臨床で実践します。」との言葉が、次回も頑張ろうというモチベーションに繋がってきた気がいたします。
さて、シミュレーショントレーニングでは、受講者は、過度の緊張することなく、安全が確保された環境で、自己のペースで、繰り返し学習することが可能で、さらに、臨床現場では遭遇する機会が少ない危機的状況の設定も容易で、トラブル時対応も学べるため、提供する医療の安全性向上に繋がります。
患者さんにとっても、未熟な医療者が実施する医療行為による不必要なリスクから回避可能というメリットがあります。
シミュレーショントレーニングの目的は、大きく分けて3つあると考えます。
1つ目が、中心静脈穿刺に代表される手技の修得です。
2つ目は、1次救命処置や困難気道管理など既存のガイドラインやアルゴリズムの理解と確実な実践になります。
ここまでは、個人レベルでの修練が主体です。
3つ目は、状況認識、情報収集、意思決定、コミュニケーションなどチーム医療の必須であるノンテクニカルスキルのグループトレーニングです。
これら3つの目的を網羅し、達成、習熟することで、修了者が提供する医療の質と安全の向上に繋がります。
最近になり、1つ気掛かりなのは、若い世代の医療者のインストラクター離れが急速に進んでいます。
ゆとり世代やZ世代の医療者は、週末のセミナーや講習会に対して、受講生としては積極的に参加してくれますが、残念ながら、教える側にまわることには消極的な気がいたします。
さらに、医師の働き方改革で、週末のインストラクター活動が時間外勤務に加算されるようなことになれば、壊滅的な打撃を被ることになりそうです。
まずは、なんらかの救済策が講じられることを期待しております。
医療は、絶えずリニューアルしています。
普段当たり前に実践している手技や知識が、実は時代遅れかも知れません。
この文章をお読みいただいた皆様も、全国各地で開催されているシミュレーショントレーニングに参加し、手技や知識を見直して、提供する医療の質と安全を向上しませんか。
一般社団法人医療の質・安全学会 理事長
水本 一弘