医療安全よもやま話

TOP > 医療安全よもやま話 >  第29回:「医療安全」と「行動」 ー土屋 守克ー
第29回:「医療安全」と「行動」 ー土屋 守克ー

私は現在、看護大学で教員として勤務していますが、10年ほど前までは臨床看護師として働いていました。
しかし、正直に告白すると、当時の私は医療安全に特別な関心を持っていたわけではありませんでした。
また医療安全の管理等に関わった経験もなく、一スタッフとして必要最低限の関わりを持つ程度でした。
そんな私が医療安全に目を向けるきっかけとなったのは、心理学の一分野である行動分析学との出会いでした。

行動分析学は、人間を含む動物の行動の仕組みを研究し、さまざまな社会問題の解決に取り組む学問分野です。
この分野の特徴は、行動を環境との相互作用として捉え、観察可能な行動に焦点を当て、客観的なデータに基づいて分析することなどにあります。
看護師として「心」よりも「行動」に興味を持った私は、少々変わり者だったかもしれません。
そして、当時所属していた部署で、医療従事者の「行動」を「客観的なデータ」として測定できる方法を探していた私は、生体情報モニタ(以下、モニタ)に着目しました。
特に注目したのが「アラーム」機能です。
時、モニタのアラーム放置による医療事故が報道され、問題となっていました。
メーカー等の協力を得て、それまでは記録機能のなかったモニタのデータを収集・分析することができ、その成果をいくつかの論文として発表することができました。
これを機に、私の研究テーマは医療安全へと広がっていきました。

現在でこそ医療安全を研究テーマの一つとしていますが、専門家を名乗れるほどの自信はありません。
しかし、医療安全において人の行動の理解は避けて通れないと考えています。
さらに興味深いことに、安全に関する考え方であるSafety-ⅠとSafety-Ⅱに、行動分析学との類似性を感じずにはいられません。
Safety-Ⅰが失敗を減らすことを目指し、Safety-Ⅱが成功を増やすことを目指すように、行動分析学も不適切な行動を減らし、望ましい行動を増やすことを目指しています。

安全という概念は、単に事故を防ぐという消極的な目標にとどまるものではありません。
人の行動を深く理解し、望ましい行動を育むという積極的な視点を持つことで、より効果的な安全管理が可能になると考えています。

日本医療科学大学 保健医療学部 看護学科
土屋 守克