医療安全よもやま話
2024-05-27
私は看護師です。とは言っても、教育現場で勤務している期間の方が長いので、私自身が病院で医療安全に関わったことはありませんが、医療安全に関わる立場の大学院生を指導してきました。
つまり、その院生達の研究を通して、医療安全を学んできたということになります。
ある看護師が大学院に入学してきたときの話です。
「先生、私、根性論には興味ありません!」と言いました。
「どうにか頑張って!とか、頑張ればどうにかなる!とか言われても、何も響きません」とその院生は言いました。
さらに、現場はすでに頑張っています!と。
その方は、医療安全に役立つ理論や方法を知りたいと大学院に進学してきたのです。
そこで私が提案したのは行動分析学という心理学でした。
私自身が博士課程の院生だった頃、この学問に出会い、対象となる患者さんに介入したら、患者さんが(以外と簡単に、というと叱られるかもしれませんが)行動変容したので、驚いたのです。
この分野の先生の中にはこれを「目からウロコの心理学」と呼ぶ人もいます。
この行動分析学という学問は、行動そのものではなく、その行動に先行する事象と後続する事象に注目します。
特に、行動に後続する事象を提示したときのみ、この行動が増えるとすれば、その行動は「強化」されたと表現します。
つまり、行動に後続する事象が行動を強化する刺激になっていると解釈するのです。
これまでの院生達の研究で、医療安全対策に必要とされる行動にもこの学問が大いに活用できるということが分かってきました。
特に、行動を強化する刺激として効果的なのは、リアルな行動のフィードバックです。
医療者でも患者でも、自身の行動を客観的に見る機会は割と少なく、そして意外と難しいことなのです。
コロナの影響でオンライン会議が増え、会議中に自分がどんな顔で会議に出席しているのか知って驚いた経験はありませんか?
他人には行動変容を求めるものの、割と自分の行動を変えることは難しいものです。
録画した行動のデータや録音した音声のデータなどを本人に見せたり聞かせたりすると、割と簡単に行動が変容することがあります。
行動変容しない医療者や患者を責めたりせずに、リアル行動データを本人にフィードバックできないか考えてみるのも良いと思います。
割と楽しみながら、医療安全に寄与できるかもしれません。
是非、お試しください!
大阪医科薬科大学 看護学部
飛田 伊都子