医療安全よもやま話
第19回:研究ノススメ ー大石 雅子ー
2024-01-16
私は長年に亘り大学病院の薬剤師であった後、医療安全管理を標榜する大学院で教育・研究に取り組んでいます。
病院では調剤をはじめ医薬品情報、購入管理のほか、製剤や医師主導治験薬の検討、栄養サポートに取り組み、デジタル化初期の激動期でしたので、部内情報の電子化や、処方支援システム・電子カルテ対応に取り組んだ世代です。
また、医療安全元年にはじまって、第4次・第5次医療法改正で医療安全が重要性を増す時期には、医薬品安全委員会を立ち上げ、医薬品安全使用手順書やハイリスク薬表を作り、インシデントレポートの分析に苦心しました。
薬剤部研修生、がん研修、注射剤混合調製などの教育にも携わっていましたが、いずこも同じで日常に追われていた次第です。
大学院に移籍した当初は、朝から晩まで、という仕事から、医療安全のリスキルを志す社会人大学院生対象に夕方以降が主務となり、真昼間の電車に借りてきた猫のように座っていたものです。
初年度、担当学生は臨床検査技師と、臨床検査技師養成校の教員、介護福祉士の3人でした。
2年目は看護師、3年目は作業療法士と言語聴覚士、その後も薬剤師、診療情報管理士、医薬品登録販売者、胚培養士、医薬品製造者、理学療法士、診療放射線技師、、、とまあ10年足らずの間に、様々な職種の医療従事者と現場をフィールドに研究してきて、医療安全の世界の広さと深さを実感しています。
様々な職種と研究を始めるには、その職種の業務内容や医療安全教育をめぐる状況を知って、問題点を理解し、計測や分析の方法を検討せねばなりません。
その上で、ある学生はNSTとICTとの連携に取り組んで成果をQIにより可視化し、ある学生は高齢者施設でシンバイオティクスの効果を二重盲検で検証し、またある学生は多剤併用軽減のために病院薬剤部と薬局・診療所・施設での情報共有を検討し、他にもインシデント報告の分類や認識を分析し、薬薬連携の実態を調査し、不妊治療や免疫抑制薬の安全性を検証し、診療情報の質の計測と向上に取り組み、後発医薬品製造事故の分析を行い、ドラッグストアでの安全意識調査に取り組み…等、職種の多様性を活かして様々な研究に取り組んできました。
病院で色々な仕事をして間口は広いつもりでしたが、発見・勉強の連続で、研究の余地は多分にあることを知りました。
質的研究に触れたのも収穫でした。
皆様の今そこにある問題点は、医療安全の歴史や解析手法を系統的に知り、普段の仕事を省察することで、その先に解決法や多職種の仲間が得られる契機になるかもしれません。
以上、研究ノススメ、でした。
滋慶医療科学大学大学院
医療管理学研究科
大石雅子