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第46回:医療における安全管理の役割 ー中島 勧ー

私は医療機関で医療安全研修の講師を務める際、しばしば「医療の真の役割とは何か」という問いを投げかけます。
多くの人は「病気やケガを治すこと」と答えを思い浮かべますが、私はその“ありきたりな答え”を引き出すために質問しているわけではありません。

では、なぜこの問いを投げかけるのか。
少し立ち止まって考えてみてください。

例えば、生まれ故郷を離れて暮らす人が、地元に残る家族や友人のことを思うとき、「あの地域には、困ったときに頼れる医療があるだろうか」と気にかけることがあるはずです。
たとえ受診の機会が少なくても、患者の気持ちに寄り添い、必要なときに適切な医療を提供してくれる医療機関が地域に存在するだけで、人は安心できます。

私は、突き詰めれば 医療の役割とは地域に安心感を与えることだと考えています。

例えば、近所のお年寄りが転倒して骨折し、手術を受けたという噂を聞いたとします。
その後、以前と変わらない笑顔で帰宅する姿を見れば、「この病院が近くにあってよかった」と自然に思えるでしょう。
一方で、軽い体調不良で受診したお年寄りが「こんなことで来たのか」と強く叱責され、塞ぎ込んでしまったと聞けば、地元に残した家族のことが急に心配になるはずです。

最先端の医療技術や高度な治療が提供できることは、もちろん安心感の土台になります。
しかし、もし有害事象が起きた際に不誠実な対応がなされたり、接遇の問題で医療機関への信頼が損なわれたりすれば、どれほど高水準の医療を提供していても、地域に与えられる安心感は大きく揺らぎます。

以上のように、私は医療の役割を「地域に安心感をもたらすこと」と捉えています。
そして、その安心感を損なう要因を取り除くことこそが、医療安全の本質的な目的だと考えています。
つまり 医療安全は、医療の真の役割を守り続けるための最も重要な営み なのです。

医療安全管理を「ルールを守ること」「病院長の指示に従うこと」とだけ捉えている人がいるなら、ぜひこの考え方を知ってほしいと思います。
そして、患者だけでなく、医療機関で働く職員にも安心感を届けられる医療を目指すことの大切さを感じてほしいのです。

みんながそう願い、行動することで医療は必ず変わります。
私はそう信じています。


虎の門病院医療安全部
中島 勧