医療安全よもやま話
2026-08-25
医療の安全保障は、もはや病院における医療安全の問題を超越している。
世界で紛争が多発し、国連の無力が露呈した。
その傘下にあるWHOは米国の離脱と未払い分担金増加のため、予算削減や人員縮小などで機能不全に陥っている。
「国際社会が守ってくれる」という前提は完全に失われ、私たちが何を為すかを真剣に考えなければならない。
国際秩序の番人であるはずの国連においては、常任理事国が拒否権を行使すれば安保理決議は機能せず、総会決議に法的拘束力はない。
ロシアのウクライナ侵攻も、米国のイラン・ベネズエラへの軍事作戦も、国際社会による制止は叶わなかった。
力を持つ国が秩序の違反者になれる時代に突入している。
日本はホルムズ海峡問題でも個別交渉に出遅れ、その脆弱な外交力をさらけ出した。
ホルムズ海峡閉鎖は、医療現場に直撃した。
透析資材、人工心肺、注射器、手術用手袋など生命維持に直結する医療材料の多くは石油由来の樹脂を原料とし、海上輸送に依存している。
供給が滞れば価格は2倍程度に高騰し、GW明け以降のナフサ確保にも見通しが立たない。
さらに深刻なのは、命に直結する医療資材を優先配分する法的制度が存在しないことだ。
米国は2025年5月COVID-19研究所起源説を根拠に掲げ、危険な機能獲得研究(GOF)への資金を停止し、NIHは6日から施行予定だった二重用途研究(生物兵器等への転用、既存ワクチンや治療薬を無効化するウィルスの作成など)に関する政策を撤回したが、いまだに機能獲得研究の新たな分類・審査などの監視政策は制定されておらず、危険なGOFおよび二重用途研究は停止、新規助成禁止状態が続いている。
クルーズ船でのハンタウィルス集団感染とコンゴでのエボラ流行が相次いで報告され、GOFの痕跡はないとされているが、国際的な監視機構は機能していない。
WHOのパンデミック協定は、2026年5月、PABS付属文書が未合意のまま完全発効が先送りされ、GOFに関する世界的な議論がなされる余地が残された。
国連もWHOも、もはや盤石な拠り所ではない。
外部への依存が通用しなくなった今、医療は原点に立ち返ることを迫られている。
法整備や国産化・備蓄拡充といった制度的対応は急務だが、それと同時に、現場で働く一人ひとりが「患者のために、この社会のために何ができるか」を静かに、しかし真剣に問い続けることが求められている。
その問いを手放さない限り、医療の本質は守られる。
東京科学大学大学院
医療安全管理学分野
工藤篤